浄土真宗本願寺派 一乗山 妙蓮寺

お知らせ

2021.12.17

9日より始まりました御正忌報恩講法要が、16日、ついにご満座を迎えました。

会議や準備期間を入れると、約ひと月がかりの法要で、ご門徒の皆様におかれましては本当にお疲れ様で、有難うございました。

いつものようにお晨朝のお勤めの後は、温かい朝がゆを頂きます。

そして、朝8時から仏教婦人会の方々によるお斎つくりがはじまり、ご飯やけんちん汁が炊かれる熱気と香気が満ちてお寺中が暖まり、活気づきます。

コロナ禍の懸念が大きかった昨年にはなかった2年ぶりの光景と雰囲気で、嬉しくなりました。

今年は御膳ではなく、お弁当方式。

依然としてコロナ禍にあることを考えて、お持ち帰りもできるようにとの配慮です。

皆さんと一緒に『正信偈』のお勤め、

また本日は蓮如上人の著された『御俗姓』を拝読しました。

お説教は、本日も高座説教。


煩悩によって心が振り回され、泣いたり苦しんだりしながらも、そこは阿弥陀様の御手のなか。
自ら称えるお念仏の一声一声に、そのことを知らされてゆきます。

行橋市 光願寺ご住職 野田成敏師

法要後には、仏教婦人会、女性のご門徒を中心にお供えのお下がりを仕分けし、来年のカレンダーや各種ご案内の準備をしてくださいました。

また、仏教壮年会、男性のご門徒を中心に、幕や仏旗の撤去、お華の始末や仏具の片付けなど、手際よく進めてくださいました。

皆さま、八日間だんだんと疲れがたまるなかでのご報謝、何とも尊いことです。

8日から毎日ご参拝くださった臼杵のご門徒、毎朝お晨朝に出てくださったご門徒をはじめ、ほぼ毎日お越しくださったご門徒も多くおられました。

ただ、15日の大逮夜法要は例年になくお参りが少なく感じられ、親鸞聖人のご往生前夜として何とも寂しい思いが致しました。

ただただ、住職の不徳の致すところで、仏祖に対して申し訳なさを感じています。

しかし、

蓮如上人は一宗の繁盛(繁昌)は人数の多い少ないではない。一人であっても信心を頂いて、お浄土に往生して仏と成らせて頂くのであれば、それが一宗の繁盛であると仰いました。
だから、念仏往生のご法義が繫盛するのは、後の時代に生まれ、ご縁のなかにいる一人の信心の力によるのであると。

一宗の繁昌と申すは、人のおほくあつまり、威のおほきなることにてはなく候ふ。一人なりとも、人の信をとるが、一宗の繁昌に候ふ。しかれば「専修正行の繁昌は遺弟の念力より成ず」(報恩講式)と、あそばされおかれ候ふ。

ある和上様は「その一人に、先ず住職のあんたが成りなさい」と仰ったと先輩にお聞きしたことがあります。


そうすると住職の不徳とは・・・

それは私自身が、もっともっと仏祖のお心に耳を傾け、仏法を頂き、お念仏を申すことのほかないということでありました。

「繫盛(繁昌)」というと、思い出されるお話があります。

むかし、愛知県の田原というところに、「おその」と呼ばれる女性のご門徒がおられました。

ある時、善桂という僧侶が、おそのさんに向かって、「あなたは大そう仏法をおよろこびになるが、あなたの在所では、そんなに仏法が繁昌しているのですか」と尋ねました。

おそのさんは即座に「他人さんのことは、存じませんが、私一人は大繁昌でございます」と言われます。

「ではどのように繁昌しているのですか」と尋ねると、

「はい、朝から晩まで、四六時中、あるわ、ないわ、足るは、足らぬわ、かわいいわ、にくいわと、三毒やら、五欲やら、それはそれは繁盛しております」と。


善桂師はそれを聞いて「ほう、それがそなたの繁盛ですか、それじゃあ仏法の繁盛じゃあなくて、ただの煩悩の繁盛じゃないですか」と答えます。


するとおそのさんは、自分の胸をおさえながら、ニコニコと、

「はい、これさえあったらなあもし」と言ったといいます。

それは、四六時中煩悩によって、貪りや憎しみ、ねたみやそねみに苦しんだり、悲しんだり・・・こんな私を救いの目当てとして、もう二度と煩悩に振り回され、惑わされることがない、清らかな涅槃の浄土に生まれさせようという阿弥陀さまのお救いは、この煩悩の痛みのなかでこそ味あわさせていただくことができることを「仏法の繁盛」と言われているのでした。

病気が手ごわいほど、対処する医師や薬の力は大きく注がれます。

健康な子よりも、病気がちな子にこそ親の愛情はひとしおかかりきります。

そうすると、煩悩繁昌(=苦悩の繁盛)がそのまま仏法の繁盛であり、煩悩から離れられないことは、悲しいけれども、それが阿弥陀さまのお慈悲に気づき、深く味わう糸口でもあったのです。

さて、八日間、ご参拝くださいました人生の先輩であるご門徒の後ろ姿を見送りながら、共に同じ親様、阿弥陀様に抱かれた仲間、兄弟であると思うと、尊く、有難く、心強い思いが致します。

来年もまた、阿弥陀様が大繁盛の真っただ中を、お念仏のなか味わいながら日々を送りたいものです。

ご門徒の皆様、本当に有難うございました。お疲れさまでした。

浄土真宗本願寺派(西本願寺)-親鸞聖人を宗祖とする本願寺派